2025年(令和7年2月) 82号

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ビシャガキの花は、数が多い
花粉が多い蜜も出る

 蜂場を縁取るように水仙が咲くあづり蜂場の作業が終わって、山田さんが群の状態を記録していた時、英幸さんが「ここの蜂場は志摩から引き上げる前の1週間か2週間、桃の花が咲いてめっちゃきれいなんですよ」と、嬉しそうに私に教えてくれた。

 志摩半島には、正浩さんが「元群」と呼ぶ選抜された採蜜のための蜜蜂が9か所の蜂場に分けて300群置いてある。この一日で、元群すべての内検を終わらせようとしていた。

 3番目に到着した梅林の奥と呼ぶ蜂場は、広々とした梅林の端に巣箱が並べてあった。すぐ傍らはビシャガキの生け垣になっている。正浩さんが私に説明する。

 「ビシャガキの花はマッチ棒の先くらいの大きさなんだけど、花数が多いし、とてつもなく花粉が多い、蜜も出る。これが咲くと春なんです。志摩半島ではこのビシャガキを2回掛けられるんです。素人の方は派手な大きな花が咲いていると教えてくれるんですけど、一つの花から花粉と蜜が出るのは同じなんで、蜂には数多くの花が咲いていることが大切なんですよ」

 普段は気に留めない地味な木だが、養蜂家の目で見れば貴重な木なのだと知る。改めてビシャガキを良く見ると、細い枝にびっしりと小さな蕾が付いている。納得だ。

 4番目は港の奥と呼ぶ蜂場だ。トラックの助手席から出た途端に海からの強い風に煽られた。ここでも巣板を持ち上げて確認することはほとんどないが、越冬の間に数の減った群の密度を高めるために巣板一枚を給餌箱の外側に置く場合は、巣房に卵が産み付けられていないことを確認する必要がある。空気はまだ冷たい。できるだけ短時間で内検を終わらせるのが蜂への愛情なのだ。

 港の奥蜂場では、女王蜂が倒れていた群があり、蜂数が巣板2枚ほどに減っていた。2キロ以上離れた他の蜂場へ巣箱ごと運び、合同することになるのだろう。

 次に、港と呼ぶ蜂場へ移動。蜂場は異なっても作業内容は同じだ。ただ、前日の桑名の蜂場では、売り蜂として出荷するための準備だったが、志摩半島の蜂場は採蜜群を冬眠から目覚めさす作業だ。内検作業をしていた英幸さんが呟く。

 「目が出荷の目になっているので、つい余裕を持たせ過ぎと思ってしまう」

 出荷する売り蜂は、巣板3枚群で出荷するのが基本だ。少しでも誠実に出荷しようとすれば同じ3枚の巣板でも、より多く蜂数を入れてやらなければならない。しかし、元群を目覚めさす建勢作業では、これから春に向けて一気に数を増やしていくために微妙に余裕を持たせることが肝要だ。前日に行った出荷準備の作業と、この日の作業は、同じことをしているように見えても、作業の向かう方向が異なっていることを知った。顧客への誠実さと蜜蜂への愛情が垣間見える英幸さんの呟きである。

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