巣箱を映像で頭に入れる
和具蜂場 トラックの荷台に腰掛けて昼食を摂った後、直ちに作業が始まった
志摩半島で8番目の和具蜂場に到着して、昼食。正浩さんは朝コンビニで買った菓子パンを齧り、わずかの時間これからの段取りを3人で打ち合わせる。この時、正浩さんが「私はね、メモは取らないけど、1つ1つの巣箱を映像で頭に入れるんです」と、面白いことを私に告げる。写真を撮る仕事をしている私も映像で現場を把握しているため、正浩さんの言葉に共感できるが、正浩さんの言葉の真意は「巣箱の中の蜂の状態」まで映像で頭に入れるということなのだろう。その上、その映像は管理している600群の蜜蜂の現状を指すだけでなく、内検の度に変化する巣箱の中の状態をも指すのだから恐れ入る。
越賀蜂場 少しでも気温が上がってくると、蜂の動きが活発になる
志摩半島で最後の片田蜂場で内検が終わったのが午後2時半。3人は一息付くこともなく直ちに帰路に就いた。
帰りの車中で正浩さんが「(養蜂の)究極を究めたい」と私に言う。その真意はと問えば「妥協しないでやっていく事」だと答える。その具体的な事例が、瓶詰めされた蜂蜜の採蜜地を市町村まで明示しているプライドだ。確かに蜂蜜の採蜜地を明示するには、それなりの根拠が必要だ。そのためには単花が流蜜する最盛期を逃さないことや他の土地の蜜と混ざらないように掃除蜜を丁寧に行うことなど、養蜂家に課せられる責任が伴ってくる。正浩さんの言葉に覚悟が伝わってきた。
その上で、正浩さんがもうひと言付け加えた。
「私は糖度が79度ないと駄目やと思う。蜂蜜を買ってくれたお客さんが、どんな場所に蜂蜜を置いてくれているか分からんからね。温度が上がるような場所に置いてあったら糖度78度でも醗酵するかも知れん」
(一社)日本養蜂協会が決めている国産天然蜂蜜の規格は糖度78度以上となっているので、それよりも更に水分を1%減らすということである。もちろん、これは人為的に水分を減らすということではなく、蜜蜂が巣箱の中で翅を震わせて巣房に溜めた蜜の水分を飛ばすのを待つということなので、それだけ採蜜できる間隔が長くなってしまう。その間に2回採蜜できるはずの開花期でも1回の採蜜で終わったり、2回目の採蜜では他の花の蜜が混じってしまったりするなど、収量が減るだけでなく様々なリスクが生じてくる。糖度を一度上げるには、それなりの覚悟が必要なのだ。
梅林蜂場で3人が同じペースで内検が進む
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