2025年(令和7年4月) 83号

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寒さで餌を取りに行くこともできず

 2日目は鬼岳の裾野にある崎山蜂場で内検だ。42群ほどの巣箱が並んでいる。純一さんと珠江さんの呼吸もぴったり合って、北海道から移動してきた継ぎ箱から単箱に蜂の集った巣板を移動し、蜂の空間密度を高めている。

 珠江さんが純一さんに声を掛ける。「重たい巣入れたよ。これ花粉の巣だから使って……」。「よっしゃ」と純一さん。蜜巣板は餌として大切だが、花粉も欠かせない餌だ。純一さんが作業をしている巣箱を見て、花粉が必要だと判断した珠江さんが純一さんのリクエストがある前に巣箱に入れておいたのだ。まさに阿吽の呼吸である。

 珠江さんが私に2枚の巣板を見せる。巣板の上部で円形の固まりになった蜜蜂が死んでいた。

 「固まりになった所に卵が産んであって、それを温めようとして集まったんだけど、寒さで餌を取りに行くこともできずに死んでしまったのだと思います。この円形の蜂の中に女王蜂も居る筈なんだけどね。女王蜂って死んだら小っちゃくなっちゃうんだよね﹂

 3枚先の巣板には蜜が溜まっているので、わずか10センチほどの距離だけど、寒さのため蜜を取りに行けなかった蜜蜂たちの無念を想像する。

 「死んだのは北海道にいる時だと思う。いや、こっちに来てからもずっと寒い日が続いたから、こっちに来てからなんかも知れないけどね。数が少ないからね(蜂球を作って温まることができなかったので)可哀想だよね」

 ちょっと感傷に浸っていると「一枚もらうかな」と純一さんから声が掛かる。蜜巣板のリクエストだ。「はいよ」と、珠江さんが応える。

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