2025年(令和7年5月) 84号

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京都で採れた蜂蜜をブランディング

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 翌日の朝は晴天だった。株式会社ORGの上賀茂蜂場は、京都一周トレイル北山58の標識がある森に囲まれている。近くには獣害避けの柵をしたまま耕作を放棄した畑が幾つか見受けられた。

 「ここ上賀茂蜂場は、うちが最初に借りた蜂場で、原点ですね。うちは今、150群です。50群は(他所から)買っているんです、今年は。最初は失敗してしまったんですよ。販路がボヤッとしているのに、蜂蜜を生産してしまったんです。京都の歴史的風土保存地区で採れた蜂蜜をブランディングして世界に届けたいんです。日本が誇る蜂蜜を届けたい。土地が良くないと蜜源植物は育たないし、良い蜜源植物が育たないと良い蜂蜜は採れないですから。京都やから出来るというところがありますよね」

 内検を始めた木村さんの頭の中は、如何にしてHONEY.Kが提供している蜂蜜の価値を伝え、販売に結びつけるかで一杯のようだ。

 「私、だいぶ野心は大きいと思います。その分、販売でストレスを抱え込みますね。生産者が嫌がる販売の分野をやればメーカー業ができますよ。やはりメーカーでないと……。蜂蜜はマーケットが小さ過ぎますよね。野菜が100とすれば蜂蜜は2か3くらい。新参者が言うのもおこがましいかも知れないけど、養蜂を面白くしたいし、養蜂と農業、両方見えている視点で言えば、交配用蜜蜂を育てている養蜂家は尊いし、生態系の維持にも繋がっている。石油とコンクリートの世界から離れていかないと、もう地球を手放しますかという話ですよ。パッションはあるんですけど、独りではできないですから……。養蜂の技術的には干場流(参照:羽音に聴く78号)を一所懸命学んで、実践しています。数値的な要素を持ち込んだだけで、あんだけ変わるんですよ」

 巣箱から巣板を引き上げ、内検を続けながら話していた木村さんの声が突然途切れた。

 「ちょっと離れます」と告げ、蜂場から出て京都一周トレイルの小径に姿を消した。面布の紐が緩くて蜂が入り込んだようだ。刺されていなければ良いのだが……。

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