良い王様の群を割り出し
未交尾の女王蜂が産まれた群に旧女王蜂が居ることが分かった。可哀想だが旧女王蜂は潰してしまわないと分封することになる
そこに、木村さんが昼ご飯の弁当を持って蜂場に復帰してきた。先ほど蜂場を離れたついでに、京都市内で一件打合せをしてきたようだ。木村さんは一言ふた言、大台さんと言葉を交わした後、元の巣箱の列に戻って内検を始めた。やはり眉間の近くを刺されたと話していたが、どうやら面布の問題だけでは無さそうだ。午後から内検を始めた途端に、蜂が上着の袖口から腕へ入り込んで、木村さんは再び戦列から離脱して態勢を整え直してきた。分厚い手袋を着けて、袖口はガムテープでグルグル巻きにしてある。
ようやく落ち着いて2群ほど内検を終えたところで、木村さんの携帯電話が鳴った。何やら話しながら再び蜂場の外へ。これではなかなか蜂場の仕事は捗りそうもない。再び戦列に戻ってきたが、30分ほどすると「今日は戻れない」と言い残して蜂場を後にした。
午後4時ごろ、内検作業を終えて巣箱から抜いたサクラ蜜の蜜巣板をトラックに積み込む
大台さんは、そんな慌ただしい木村さんの動きに影響されることなく淡々と作業を続け、午後4時ごろには上賀茂蜂場の内検を終わらせた。しかし、これで大台さんの仕事が終わったのではない。ここから約一時間余移動して、京北にあるHONEY.Kの工場で内検の際に抜いた蜜巣板のサクラ蜜を搾らなければならない。
カーブの多い山道を走り続けた大台さんが運転する2tトラックは、京北工場の直前になって横道に入り、京北蜂場へ向かった。もう日は落ちて辺りは薄暗い。今更、蜂場での仕事はないだろうと思っていたが、大台さんは巣箱一つを抱えて蜂場入口の電柵を外し、10群ほど置いてあった巣箱から少し離して、持ち込んだ巣箱を置き、巣門を開けた。
「今日の内検の時に良い血統の王様の群で蜂数が増えているのを見付けたから、王台も付いていたんで割り出した群なんです。元の群の近くに置いておくと戻ってしまうので、ここに運びました」
数日中には、良い血統を受け継いだ女王蜂が王台から誕生し、無事に交尾を終えて群に戻れば、新王を核にした優秀な血統の群が新たに誕生するということだ。
蜂場を見回すと、北海道から移動してきて紐が掛けられたままの継ぎ箱が7箱あった。巣門は閉じたままである。純一さんに理由を聞くと、蜂場に運んで設置をしようとした時、すでに巣箱から羽音が聞こえなかったので中の蜂群が死んでいると判断したのだそうだ。巣門を開けておくと盗蜂といって、他の蜜蜂群から、その巣箱に残されている蜜を盗りにくる蜂がいるので巣門を閉めてあるのだと言う。
優れた女王蜂群の蜂数が増えていたので、王台の付いた巣板と働き蜂を一緒に割り出した巣箱を京北蜂場へ移動する
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