蜂蜜評価の新視点「テロワール」
京北の作業場で木村さんがパウチに蜂蜜を詰める。パウチの作業は企業秘密の部分があって近くからの撮影はできない
この日、夕方から木村さんが蜂蜜をパウチに充填すると連絡があり、京北の工場へ向かった。ヘアキャップを着け、白衣を着て工場に入る。パウチに蜂蜜を充填するノズルは企業秘密なので、近接撮影はできないとのことだ。天井から垂らしたビニールシート越しに撮影をしていると、充填作業をしながら木村さんが話を始めた。
「今、注文に生産が追い付いてないんですよ。僕はマーケットがあるから常に顔を出さないといけない場所があるんです。ストレスが溜まっている時とか、体調が悪い時にはよく刺されるんですよ。昨日は、これまでで6番目くらいに刺されましたね」
木村さんは少々弱気になっているようだ。昨日の上賀茂蜂場で顔や腕を刺された後、蜂場から離れた理由を私に伝えようとしてくれているのだ。木村さんの誠実さが伝わってくる。
この日の瓶詰めは京百花蜂蜜
株式会社ORGが蜂蜜を評価する新しい視点として「テロワール」の概念を当てはめようとしていることは、蜂蜜が持っている潜在的な自然感とも結び付いている。ここでは、これまで養蜂業界が積み上げてきた単花蜜の純粋性を評価するのではなく、蜜蜂が採ってくる蜜源植物が生育する自然界の歴史、土壌や気候、地形などの影響を受けて蜂蜜の個性は決まるという考え方だ。自然が育んだ花蜜に蜜蜂の生態が介在することによって、人類にとって魔法の食品が自然界から恵まれていることを見直そうとするブランディングである。
「テロワール」の概念が養蜂業界にどう受け入れられるか、消費者はどう反応するか。株式会社ORGが試みる蜂蜜を評価する新しい視点の展開に期待したい。
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