蜂は毎日見に行け
遠藤さんの蜂場は自宅近くの林に囲まれた谷間にある
「僕はまだ、養蜂を始めて今年の8月で丸2年ですよ。僕、2年前まで、鉄道屋だったんです。19歳からずっと鉄道屋。新幹線の新線を造るアルバイトから始まったんだよね」
遠藤卓弥(えんどう たくや)さん(44)を訪ねて岩手県岩手郡岩手町大字沼宮内へ行ったのは、9月上旬。秋のキノコ狩りシーズンに入ろうかという時期だった。遠藤さんが差し出した黒い厚紙の名刺には、白字で印刷された肩書きに養蜂家/ハンターとある。
「自分で言うのもおこがましいですが、僕は本気の猟師です。それで敢えてハンターと言っています。冬熊猟です。射撃場のインストラクターをしているんです。10年くらいの間、誰も取得できなかった試験を受けたら、僕だけ受かったんですよ。人生の中で最大の自慢かな」
女王蜂の周りを働き蜂が取り囲む
秋はキノコ狩り、冬は熊撃ち、夏の仕事を漠然と模索していた時に、養蜂の師匠として教えを請う君塚忠彦さん(「羽音に聴く」30号 https://littleheaven-bee.jp/30/参照)に出会ったという。
「昨日の朝、キノコの山へ行ったけど収穫はゼロ。駄目だった。土の温度が上がっちゃって菌が駄目だ。もう3、4回は山へ行ったかな。時期としては未だなんですよ。でも、山の動きを見たいんで……。毎朝のように行くのは、何かしらの変化があった時にチャンスがあるんです。それを見逃さないようにしたいんです。熊も同じ。何故、熊を見付けられるかと言えば、毎日行くから、その変化に気付けるということなんです。大切なのは、その変化に気付けるかどうかなんですよね。蜂の師匠は『蜂は毎日見に行け』と言うんですよね。もちろん愛情もすごいんですけど、蜂がどうなっているのか、毎日見ているからその変化に気付けるんですよね。蜂もキノコも熊も同じなんです。情熱ですよね」
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