最初から20群は無理だ
蜂場横のビニールハウスの倉庫で休憩する遠藤さん
どの様にして遠藤さんは養蜂を始めることになったのか。もう少し、話を掘り下げてみたい。3年ほど前のことだ。以前から養蜂をやっていた伯父が、ダニで蜂を全滅させたため、新しく蜜蜂を購入して再度養蜂を続けようとしていた時、遠藤さんも自分で蜂を買って、伯父と一緒に養蜂を始めるつもりだった。伯父と同じ養蜂業者から蜂を購入しようとしていた時に偶然出会った男性が、「その養蜂業者は評判が良くないから、そこから蜂を買うのは止めた方が良い」とアドバイスをしてくれて、その代わりとして君塚忠彦さんを紹介してくれたのだが、君塚さんは「ちゃんと蜂を飼えない奴に蜂は売れない。どうしても蜂が欲しいなら蜂を覚えろ」と言われて、半年間、君塚さんのところで養蜂の修業をすることになる。
巣房の奥を懐中電灯で照らして卵の有無を確認する
「自分で養蜂を始める前は、鉄道保線の仕事をしていましたから、勤務は夜なんです。眠らなければ昼間に仕事を作ることはできるんですよ。師匠の君塚さんの所に半年間、がっつり行きましたね。師匠の手伝いに行っていた春の暖かい日の朝でした。燻煙器に火を着けて蜂場の階段を下りて行ったら、巣箱の前の空間をものすごい数の蜂が飛び交っているんですよ。羽音がすごいじゃないですか。口の中に飛び込んで来るように蜂が飛び交っている。その様子を見た瞬間、感動しましたね。これで飯が食えたら幸せだなあ、と思いましたね。それから3か月ほど経って、君塚さんの蜂場の採蜜が終わり、気持ちにも時間にも余裕ができて、蜂蜜が幾らで売れるか経済面も教えて貰えて、半年間、君塚さんのところで集中して修業してから、この人の言うことを聞いたら俺は飯が食えると確信を持ったんです。それでカミさんに『仕事辞めても良いかな』って聞いたら『あんたならできると思うよ』と言ってくれて、それで決心しましたね。でも、その時、賛成してくれたのはカミさん一人だけでした。親も親戚もみんな反対」
養蜂で食べていく決心をして、君塚さんに蜂を20群売って欲しいと頼んだところ、君塚さんからは「最初から20群は無理だ。5群遣るから、それから始めろ」と言われるが、「養蜂で飯を食いたいから」と、遠藤さんは20群にこだわった。そのため5群は遠藤さんが自分で購入し、移虫群10群と割り出し群5群を君塚さんが贈ってくれて、計20群で養蜂を始めることができたのだ。無謀を承知でいきなり20群から養蜂を始めた時「無謀の次は、貧乏が待っているよ」と、君塚さんのところで養蜂の修業をしていた先輩から言われた言葉が忘れられない。
継ぎ箱に開けた小さな巣門に花粉団子を脚に付けて戻ってきた外勤蜂
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