2025年(令和7年9月) 86号

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心を鬼にして移虫して

 翌朝、蜂場へ行く準備で忙しくしている遠藤さんを自宅横の倉庫に訪ねると、「中を見ますか、写真は何を撮って良いですから」と、遠藤さんが私を倉庫の中に案内してくれた。失礼ながら倉庫の中はあまりにも雑然としていて、視点が定まらず写真を撮るまでには至らなかった。ただ壁際に雑然と並べられたスプレー缶や薬品のボトルなどがあり、それに捕虫網やタモ網の類いが無造作に立て掛けてあったのが印象的で、機械好きでありながらも自然志向の暮らし方が伝わってくる。

 倉庫から出ると、遠藤さんが軽トラックの荷台に敷いたコンパネを指差して「これ見て」と言う。一瞬何のことか分からなかったが「蜂の翅にダニが付いているんです。ダニにやられた群の蜂なんですけど、蜂が死んだらダニは蜂から離れていきますね。鹿や猪のダニも同じですね」と、説明する。よく見ると、コンパネの上に数匹の蜂の死骸が転がり、その一匹の翅にダニが付いているのが分かった。これは深刻な状況なのかも知れない。

 「この2週間ぐらいで一群だけですけど、ダニにやられたんですよ。産卵が止まっていて……。ダニにやられていない群の蜂は、巣板の上に被せている麻布を齧って糸を外に出すんですよね。グルーミングって言うんですかね。麻布を齧っている奴らはダニが居ない傾向が強いですね。最近知ったんですよ。グルーミングが得意な群とそうでない群は集める蜜量の差がすごいんです。僕は血統交配なんで、心を鬼にして移虫して、ヘギイタダニに強い血統を増やしていかないと駄目だと思っているんです。彼女たちが何をやっているかと言えば、掃除しかないですもんね。グルーミングができない群は、働き蜂の体にダニがびっしり付いているんですもんね。こんなになるんだとビックリしました。ダニに弱い群はグルーミングの訓練をさせれば良いじゃないかと思ったんですけど……。どうですかね」と、私に聞く。

 「ダニが存在しなければ、かなり上手く出来るんでしょうけれどね。去年よりも蜂の状態がいいなと思っていた矢先に壊滅する群がありましたもんね。今年は蜂が全然減らないんですよね。それなのに壊滅群が出たのは、これは血統の違いが原因だなという結論になったんです」

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