2025年(令和7年11月) 87号

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蜂の善し悪しや機嫌も分かる

 外が小雨模様ということもあって、蜂場へ行く流れにはならない。会議室で石川さんの話を伺っている間にも黒澤さんが三ヶ日みかんジュースを出してくれて、「2代目の蜂蜜」と「3代目の蜂蜜」の食べ比べもさせてもらった。黒澤さんの経歴を尋ねると、養蜂歴はまだ3年と半年だと言う。

 「入社は2022年4月で、24歳の時でした。高専から長岡技術科学大学へ進み、大学院では植物の形態変化を応用して農業分野に活かすために、植物遺伝子が環境によって変化していく要因を追求していく基礎学問をやっていたんです。簡単に言えば、植物にストレスを与えることで遺伝子が変化していく様子を研究し、その成果を農業に活かすという事なんです」

 簡単に言ってもらっても、私には雲を掴むような話だ。大学院を卒業する際は当然ながら農業分野で就職先を探したが、就職先を探す中で農業と養蜂の繋がりが視野に入ってきたことで、関心が養蜂にも広がることになる。偶々、時代がコロナ禍の真っ只中。ほとんどの求人先がネットでの面接だった中で、唯一対面で面接をしていたのが長坂養蜂場だった。「静岡まで行ってみようかな」と思い立って、面接を受けて「養蜂家になれますか」と社長に質問し、内定をもらったのだ。黒澤さんは長坂養蜂場に入社した後、集中して養蜂を学ぶために昨年6月から10月までの4か月間、熊本の西岡養蜂園で集中して修業してきた。昨年退社した先輩が修業していたのと同じ養蜂場である。

 「内検は勿論ですが、採蜜、蜂割り、出荷用蜂など4か月間ずっと蜂を見ていると、蜂の善し悪しや蜂の機嫌も分かるようになって、余計な養蜂の情報が入ってこないので、学んできたことが活かせるようになりましたね。西岡さんには『どんだけ蜂を見たかを大切にしろ』と言われました。うちの養蜂部の現在の課題は採蜜量ですね。一群当たりの収量は今年は多かったけど、三ヶ日町に拘るために他の土地に蜂を持って行きたくないんですよね。そうすると5月上旬に採蜜する三ヶ日みかん蜜から里山(百花)蜜の採蜜も6月中旬には終わってしまって、三ヶ日みかん蜜は秋には売り切れなんです。蜜源の植栽計画を立てて三ヶ日町で、もっと長い期間採蜜ができるようにしないと将来の採蜜計画が立てられないですね」

 もちろん養蜂部マネージャーの石川さんも将来の展望を描いて仕事をしてきた。

 「僕が会社に入ってから開拓した蜂場も多いので、入社した5年前とはずいぶん変わりました。当初は200群ほどもない状態だったですが、来年の採蜜群は400群を目指しています。今の時期はみかんの収穫前で、人が山に入ってくる機会が多くなるので迷惑が掛からないように気を付けないとね。お借りしている土地ですから」

 この日は結局、蜂場へ行くことなく、会議室での聞き取りで終わった。石川さんに翌日の段取りを伺っていると、突然「明日の朝礼に出ませんか」と誘われた。長坂養蜂場では毎朝9時前から店舗2階のホールで朝礼が行われているのだ。シフト勤務のため全員という訳ではないが、出席できる社員とアルバイト従業員も含め、「ぶんぶんファミリー3つの心」や「長坂養蜂場ミッション」などを唱和し、仕事上での気付きや各自の考えをお互いに伝え合うことで社員のチームワーク向上を図っている。もちろん出席を約束して、写真は一枚も撮影しないまま初日の取材を終えた。

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