2025年(令和7年11月) 87号

発行所:株式会社 山田養蜂場  https://www.3838.com/    編集:ⓒリトルヘブン編集室

〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F

3

蜂児枠を合同するか相談

 本坂奥蜂場の内検は1時間足らずで終わった。続いては、本坂集落の近くにあり周りにみかん畑が広がる本坂蜂場だ。蜂場に入るとすぐに、端に置いてあった巣箱の巣門前でスズメバチが蜜蜂を狙っているのに気付いた。しかし、石川さんたちは何ら焦らない。内検が一区切りついたところで、石川さんがネズミ捕り粘着板を持って一振りすると、一瞬でスズメバチを粘着板に貼り付けて捕らえた。偵察役のスズメバチを逃すと、次には仲間を引き連れてやって来て、特に弱っている蜜蜂群を集中的に攻撃して全滅させることがあるようだが、1匹2匹で来襲しているスズメバチに大騒ぎをすることはなさそうだ。

 本坂蜂場の地面はデコボコが激しく、一箱だけ後ろ側が下がっている巣箱があったのに気付いた石川さんが蓋を開けてみると、巣箱の底に薄らと水が溜まっていた。ハイブツールで水を巣門から掻き出し、泥を掬い上げる。特に被害があったのではないが、蜂には悪影響。石川さんが適当な大きさの小石を探して巣箱の後ろに噛ませて傾きを直した。

 本坂蜂場では巣箱がきちんと並んでいる訳ではないので、石川さんと細谷さんの内検がどう進んでいくのか私には分かりにくい。しかし、2人には決められた手順があるようだ。時折、石川さんが細谷さんに話し掛けて、蜂児枠を合同するかどうか相談している。

 「蜂付きで1.5のところに入れるね」と、石川さんが細谷さんに告げている。蜂数が少なく、蜂児も少ない群の中に、有蓋蜂児(蛹のいる巣房に蓋をした巣板)の枠を蜂が集ったまま合同すると伝えている。これによって蜂数が増え、群の勢いが増すようにしているのだ。自らの作業を声に出して説明することで、蜂場全体の状況を共有しようとする意図が伝わってくる。

 内検が終わった午後4時過ぎ、黒澤さんも本坂蜂場に合流して来た。巣箱から抜いた空の巣板を冷凍庫に収める相談をしている。蜂の密度を高めるために巣箱から抜いた空の巣板を常温で保存しておくと、スムシが湧いて使えなくなる。そこで一旦は冷凍保存することでスムシが湧くのを押さえるというのだ。大型コンテナを利用した冷凍庫である。空巣を冷凍庫へ入れる作業は足下が暗くなるまで続いた。

1
3
2
4

▶この記事に関するご意見ご感想をお聞かせ下さい

Supported by 山田養蜂場

 

Photography& Copyright:Akutagawa Jin

Design:Hagiwara Hironori

Proofreading:Hashiguchi Junichi

WebDesign:Pawanavi