城下町の面影が残る金城町
首里公民館の市民講座で町歩きを案内する伝さん
翌朝は、那覇市教育委員会生涯学習部主催の首里公民館事業の一環で、伝さんが講師を務める市民講座が開催された。本土から沖縄へ移住して来ている人びとを対象に、沖縄を知り馴染んでもらうための講座だ。参加者同士はすでに顔なじみのようで、午前9時に新垣養蜂園に集合するとすぐに伝さんが先導して店舗前の急な細い坂道を下り始めた。小径は琉球石灰岩で造られた石段が崩れている箇所もあり、何が始まるのかと冒険心をくすぐられる。急な小径を下りきると右へ向けてデッキ構造の遊歩道が延びていて、その行き止まりには推定樹齢200年以上の国指定天然記念物大アカギが数本聳えていた。講師の伝さんにとっては子どもの頃から遊び場として馴染んだ地域だ。ジョークを交えながら軽妙に首里城の南側斜面に位置する琉球王国時代の城下町の面影が残る金城町を案内している。
昔から近隣の人びとが生活用水として使っていた井戸「金城大樋川」(カナグスクウフヒージャー)を案内する
6年前に正殿など7棟が全焼して、現在も復元工事が進む首里城公園の外周を歩き小径を下ると、突然、新垣養蜂園の裏に出た。首里城公園からあまりに近いことに驚く。参加者はこの後、数人ずつに分かれて屋上の蜂場見学である。蜂場で内検をしていた元岡さんがガラス戸越しに巣板を見せ、蜜蜂の生態について説明している。もちろん誰もが蜜蜂の巣箱や巣板を見るのは初めてだ。「蜜蜂って自然の中に居るのかと思っていたけど、建物の屋上でも飼えるんですね」と、参加者の女性。「半径2㎞以内に蜜源になる植物があれば大丈夫ですよ」と、元岡さん。参加者が最も反応したのは元岡さんが女王蜂の存在を指差して教えた時だ。「卵の時は働き蜂と女王蜂は同じ雌蜂なんですが、王台に産卵され孵化して幼虫になった時にローヤルゼリーを食べ続けて蛹で7日半を過ごした蜂が女王蜂となって、その後もローヤルゼリーを食べ続けて毎日2000個ほどの卵を産み続けます。一方、孵化して幼虫になった最初の3日間は同じローヤルゼリーを食べるんですけど、それ以後の食事は蜜や花粉に変わり、蛹で12日間を過ごした蜂は働き蜂になります」と元岡さんが説明する。すると「ローヤルゼリーってすごいね」と参加者から呟きが漏れる。蜂場見学が終われば市民講座は修了だ。
町歩きの参加者が新垣養蜂園屋上の蜂場を見学する
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