2026年(令和8年1月) 89号

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翅を立て背を丸めて動かない

 新しい年が明けた数日後、新潟県阿賀野市の田畑は踝(くるぶし)が隠れるほどの雪に覆われていた。「道の駅あがの」のイートインで「八米(HACHIBEI)」の代表・髙橋敦志(たかはし あつし)さん(48)に養蜂を始める経緯を伺っていると、傾き始めた太陽を気にしているのか「蜂場に行ってみますか」と、髙橋さんが私を促す。

夏にはヒマワリを植えて「お花畑プロジェクト」が開催される工場団地蜂場もやはり、辺り一面が雪に覆われていた。防寒フードを被せ、コンテナに載せた30群ほどの巣箱の上には丸い白餅のような雪が載っている。「私が先に歩きますから、足跡を踏むように歩いてください」と、髙橋さんが私を気遣う。

 巣箱の列に近づくと、真っ白な雪の上に黒い小さな点があるのに気付いた。髙橋さんが「午後は少し暖かかったので、糞をするために巣箱を飛び出したけど、寒さに凍えて飛べなくなったんでしょうね」と説明する。陽は西に沈み夕闇が迫っている。一匹の蜂が翅を立て背を丸めたまま動かない。蜜蜂が雪国で越冬することの過酷さが伝わる。「最低限の備えとしてカバーさえしとけば、元気な奴は冬を越えられるなというのが分かってきたので、過保護な越冬準備は要らないですね」と、髙橋さん。凍えた蜂を撮影している間にすっかり日暮れてしまった。

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