2026年(令和8年1月) 89号

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原形の材料に蜜ロウを使う

 髙橋さんが、大室蜂場は養蜂の起点になっていると説明する。しかし、雪に覆われた大室蜂場ですることもなく、少しの時間滞在して蜂場を後にした。髙橋さんは国道290号を街の方へ引き返していたが、突然左に折れて小さな集落の外れに建つ家の前で車を止めた。「居るかな」と呟いて軽ワゴン車を降りると、木造倉庫風な家のドアを開けた。

 「ぼくが高校の時の恩師で、今もお付き合いをさせてもらっている美術の先生なんです。結婚式にも出席してもらったんですよ」と、彫刻家の古川敏郎(ふるかわ としろう)さん(61)を紹介する。この建物は古川さんのアトリエだったのだ。古川さんは驚いた様子もなく、すぐに状況を察したように髙橋さんが提供した蜜ロウを溶かした鍋を2つテーブルの上に並べた。

 「鋳造の作品を創る時、原形の材料に蜜ロウを使うんです。イメージが先にあって、そのイメージを作品にしていくには何を素材にできるかを考えますので、蜜ロウで原形を作ったら素材は鉄、錫と鉛の合金などを200℃で溶かして鋳造します。これは工芸の分野ですよね」

 古川さんはこう説明して、素朴な動物らしき鋳造作品を埋め込んだ彫刻ブックや黒いボードに取り付けた抽象の作品を見せてくれた。どれもが素朴で愛おしく古川さんの人柄が滲んでいると思えた。一段下がった土間には、フワッと人の姿が浮き上がっている彫り掛けの一本の大きなケヤキが横たわっている。

 古川さんとはもっと突っ込んで「表現」について話してみたいと思ったが、突然の訪問なので長居は迷惑だろうと、次の蜂場へ急ぐことにした。

(古川敏郎さんについては、3ページ「蜂場ぐるり写真散策」で少し触れます。)

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