蜂屋は蜂で勝負しろ
相谷蜂場で内検をして代用花粉団子を与える
相谷蜂場で燻煙器に火を入れながら正広さんが「アレルギーのある人は大変でしょうね」と呟く。後方を見上げると、黄色い花粉を付けた杉の大木がずらりと並んでいる。聖也さんが朝作った餌をタンクから一斗缶に小分けして蜂群に配り始めている。3月中旬の作業で大切なことはと尋ねると……。
「小まめな餌やりとまだ寒さが残っているので必要以上に巣箱の蓋を開けないことですね。4月になれば、どの群も最強レベルに持っていくために合同したり、餌やりをしますけど、注意しないといけないのは巣板の挿し方ですね。『蜂屋は蜂で勝負しろ』って、うちん(西垂水養蜂園の)親方も言いよったけんですね」
聖也さんが言っているのは、蜂群の勢いに応じた数の巣板を挿すことが大切という意味だ。巣板の数が少ないと、伸びようとする群の勢いを押さえることになるし、巣板の数が多いと、群の勢いを冷え込ませることになるので、注意が必要という訳だ。巣箱の蓋を開けた瞬間に、挿す巣板を一枚にするか2枚にするかを判断する養蜂家の観察力が養蜂家の力量であるとも言える。
宮本養蜂の事務室兼作業場で美智子さんが蜂蜜瓶の出荷準備をする
聖也さんも正広さんも、内検をする際に巣箱の横に立つと先ず、燻煙器の煙を巣門に向けてプップッと噴き掛ける。「今から作業するぞ」と挨拶をするようなものだと言う。ある養蜂家からは、作業をする前にトントンと蓋をノックすると聞いたことがある。このように蜂に対して敬意を払う養蜂家の蜂は概して温和しい。そう言えば、あまりにも当然のように思えて書き忘れていたが、聖也さんも正広さんも素手で内検をしている。「素手だと刺されると思うけん、やっぱ優しく蜂を扱うけんですね」と、聖也さんが素手で仕事をする理由を教えてくれた。
宮本養蜂の仕事を見て思うのは、養蜂の技術というのは特殊な技術ではなく、蜂に敬意を払うと共に、蜂という生命体のエネルギーを感じる観察力を研ぎ澄ますことに尽きると言えそうだ。
昼食を済ませて到着した板屋蜂場では、仕事を始める前に30分の昼寝をする
板屋蜂場での仕事を終えて帰路に着こうとする宮本父子
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