拡大ではなく縮小して利益
フェロモンの弱い女王蜂を王籠(おうかご)に
入れようとする鈴木さん
しかし、会社員時代に貯めていた運転資金(貯金)は1年間で底を突き、朝3時から宅配便の仕分けや学校給食の仕事をしながら養蜂を続けていた。5年間ほどは厳しい生活が続いたけれど、徐々に巣箱が増えて、養蜂に希望が持てるようになった頃のことだ。
「2019年10月4日の金曜日ですよ。最大瞬間風速60メートルといわれる台風15号が房総半島を襲い、その当時80群ほどいた巣箱の75群を失ったんです。その時に、養蜂の仲間から『なんで巣箱を家に持って帰らなかったのか。俺は台風の間は家のリビングに巣箱を置いておったぞ』と言われて、自分の蜂に対する愛情の足りなさを思い知らされましたね。その台風被害を境に拡大志向は止めたんです。私は第二次ベビーブーマー世代なんです。ニュースなんかで話題になっていた就職難も経験し、資本主義システムの限界を感じながらも、結局、物を作って売っていくという拡大競争路線を突き進む、そんな世代なんでしょうね。しかし、それでは気持ちの休まる時はやって来ない。市場原理ではなく人間の営みの一つとして養蜂があって、それで生活が成り立っていく。そんな養蜂を目指しているんですよ。拡大して収入を増やすのではなく、縮小して利益率を高めていく方向に転換しました。自分には何箱を管理するのが適正なのかを考えた結果、身の丈に合った群数というか、自分でマネージメントできるのは20群と見定め、房総半島の里山に少数群を点在させているんです。『蜜蜂の本能を妨げない養蜂』を基本理念とし、5月と8月末に年2回だけ採蜜し、人工巣礎を使わないで自然巣で管理しているんです」
勢いの弱い群と合同するため燻煙器の煙を噴き掛ける
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